日本の子どもは貧しいのか(その2)

 

日本の子供の物質的貧困 

 

昨日の続きです。

日本の子どもは貧しいのか(その1) - 十二十

 

簡単に昨日の話をまとめると、

 

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・日本の子供の幸福度は総合6位(ユニセフ調査)。

 

・教育などが1位だが、物質的豊かさは21位。

 

・日本の子供は物質的に豊かではないのか?

 

・「相対的貧困率」が悪化している。

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ということでした。

 

イメージしやすくするためにつくった簡単な例を再掲します。

 

・夫、妻、子ども2人の4人暮らし。

・夫の年収が手取り180万円(月15万円。ボーナス無し)。

・妻のパート年収が手取り44万円(月3.6万円)。

 

これ以下の生活状況が相対的貧困とされている。

 

そして、子どもがいる家庭のうち、

全体の14.6%が、相対的貧困ということになります。

 

そして、日本はこの数値が少しずつ悪化してきています。

 

指標 昭和60年 63 平成3年 6 9 12 15 18 21
相対的貧困率 12 13.2 13.5 13.7 14.6 15.3 14.9 15.7 16
子どもの貧困率 10.9 12.9 12.8 12.1 13.4 14.5 13.7 14.2 15.7

平成22年国民生活基礎調査の概況|厚生労働省

 

昔から、貧しかった?

 

さて、このグラフを改めて見直すと、

あることに気づきます。

 

それは、

「昭和60年の時点で、すでに10.9%に達している」

ということ。

 

つまり、今に始まった話ではないのです。

 

これについては、NHKのサイトにわかりやすい説明がありました。

視点・論点 「子どもの貧困 日本の現状は」 | 視点・論点 | 解説委員室:NHK

 

1985年には10.9%であった子どもの貧困率は、2009年には15.7%まで上昇しています。この24年間の間に、子どもの貧困率は約5%上昇しま した。現在は、約6人にひとりの子どもが貧困状態にあると推定されます。これは驚くべき数値なのですが、意外なのは、1985年の時点ですでに、10人に 1人の子どもは貧困状態にあったということです。1985年というのは、まだ、「格差論争」さえも始まっていないころです。「1億総中流」などと言われ、 「日本は平等な国だ」というのが常識でした。ましてや、貧困なんぞは、戦後の混乱期以降、解消されたと思われていたのです。しかし、その頃でさえ、日本の 子どもの貧困率は決して、低いレベではありませんでした。日本は、もう長い間、子どもの貧困大国なのです。

 

なぜこんな状況になっているのでしょう。

サイトではこのように主張しています。

(サイト内にグラフがあるのでぜひご覧ください)

 

しかしながら、日本においては、青のグラフと赤のグラフの差がほとんどありません。政府の再分配機能の大きさからいうと、ギリシャ、イタリアに続いて下から3番目です。
実は、以前の国際比較では、日本の子どもの貧困率は、再分配後のほうが再分配前より高いという状況にありました。つまり、政府の再分配によって、貧困率が 上昇していたのです。今回のユニセフの報告書では、かろうじて、再分配が機能していることが見えますが、ほかの国に比べると、その効果は非常に小さいと言 わざるを得ません。
なぜこうなるのか。これは考えてみれば非常に当たり前のことです。というのは、貧困層は、所得税はそんなに払いませんが社会保険料は結構な額を払っています。しかし、給付は非常に少ない。生活保護は国民の2%しか受け取っていませんし、その半分は高齢者です。社会保障給付のほとんどは年金と医療サービス で、子どものある世帯への給付は児童手当くらいでした。さきほどのデータは子ども手当が導入される前のものなのですが、子ども手当が満額支給されてやっと 諸外国並みの給付レベルとなるのです。

 

まとめると、

 

・日本は社会保険料が高額にもかかわらず、

 子供のある世帯に対しては、

 その見返り(社会保障給付)が少ない。

 

・なぜなら社会保障給付のほとんどは、

 年金と医療サービスだから。

 

・つまり、税金による所得再分配が、

 「子育て世帯の貧困層」に対して、機能していない。

 

 

ということです。

 

これは本当でしょうか?

厚生労働省のサイト(2009年発表)で確認してみましょう。

 

 

厚生労働省:政策レポート(社会保障の給付と負担の現状と国際比較)

 

http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/09/images/09_03c.gif

 

 

このグラフを見ると、

 

確かに年金と医療が占める割合が圧倒的ですね。

「福祉その他」が少ない。

 

では、昔と比べて、変化しているのでしょうか?

 

 

http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/09/images/09_03d.gif

 

 

実は「福祉その他」については、あまり変わっていません。

 

1970年に16.8%。

1990年に10.2%に落ち込みますが、

そこから持ち直しています。

 

 

そして、このように述べられています。

 

 

http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/09/images/09_03e.gif

 

 

高齢化社会の進行に対して、支出はなんとか抑えている。

そういう主張ですね。

 

 

ここから浮かび上がってくるのは、

昔からずっと日本は年金、医療に偏った福祉政策だったということです。

 

再び厚生省のグラフです。

http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/09/images/09_03f.gif

 

 

ヨーロッパ、

特にドイツ、フランス、スウェーデンに関しては、

社会保障給付の規模が日本よりはるかに大きい。

 

ただ、これは税金をたくさん取られるということですから、

一概にいいとは言えない話です。

 

 

見るべきポイントは、

「福祉その他」の占める割合です。

ここが日本と大きく違う点ですね。

 

 

さて、また長くなってしまいました。。

もう少し考えたいので、また明日に回します。